第53章

高島信也がそう口にした瞬間、会場にいる金融関係者は全員、酒井初音の「立ち位置」を悟った。

一ノ瀬グループは御影家ほどの盤石な勢力こそない。だが金融界において、欠かせない席を確かに持っている。

――その一ノ瀬が、いまこの場で「脱落」を宣告されたも同然だった。

一ノ瀬誠司は、少し離れた場所で悔しそうに唇を噛む一ノ瀬玲奈へ、信じがたいものを見る目を向けた。続いて、先に会場へ入れておいた腹心へ視線を投げる。

腹心は手短に、先ほどの一件を復唱した。そこには、玲奈が久世美月のパソコンに触れたことも含まれている。

そのせいで――久世美月が五日五晩かけて仕上げたという企画が、消えた。

話を聞くほ...

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